
埼玉不動産の本川です。
先日、当社の管理物件の入居率がこの10年で88〜90%から97%まで改善した、という記事を書きました。空室会議や募集条件の見直しなど、社内で積み重ねてきたことがあります。
ただ、正直に申し上げます。この数字は、私たちの努力だけで説明できるものではありません。この間、地域の人口構造そのものが、賃貸住宅にとって追い風の側に動いていました。今日はその中身を数字で見ていきます。
この記事のポイント
- 北区は転入超過が自然減を上回り、人口が増えている
- 賃貸需要を決めるのは人口ではなく世帯数
- ただし追い風は永遠ではない。今のうちに打つ手がある
北区は「人が出ていく以上に、入ってくる」街です
住民基本台帳(2025年1月1日現在)によると、さいたま市北区の1年間の転入者は10,270人、転出者は8,865人。差し引き1,405人の転入超過です。人口1,000人あたりでは、転入率67.96人に対して転出率58.66人となっています。
さいたま市北区の1年間の人の動き(住民基本台帳・2025年1月1日現在)
転入・転出(社会増減)
出生・死亡(自然増減)
一方で、出生数969人に対し死亡数は1,571人。自然減は602人です。北区の人口は、転入超過が自然減を補って、増えている状態です。
賃貸需要を決めているのは、人口ではなく世帯数です
ここが今日いちばんお伝えしたいところです。さいたま市全体の数字が分かりやすいので挙げます。
令和8年6月1日現在、人口1,361,035人に対して世帯数は666,169世帯。前年同月と比べると、人口は7,326人増えたのに対し、世帯数は10,447世帯増えました。
さいたま市全体・前年同月からの増加(令和8年6月1日現在)
人口
+7,326人
世帯数
+10,447世帯
1世帯あたりの人員
約2.06 → 約2.04人
人口の伸びよりも、世帯の伸びのほうが大きい。これは「1世帯あたりの人数が減り続けている」ということです。実際、1世帯あたりの人員はこの1年で約2.06人から約2.04人へ下がりました。北区でも、国勢調査(2020年)時点で人口149,242人に対し一般世帯66,401世帯、1世帯あたり約2.25人。ここから一貫して縮小しています。

同じ人口でも、4人が1つの住まいで暮らすのと、2人ずつ2つに分かれて暮らすのとでは、必要な住戸数が倍違います。単身高齢者、単身の若年層、子どものいない共働き世帯。世帯が細かく分かれるほど、住まいという「箱」の必要数は増えていきます。
住み替え需要
受け皿に
転入超過と世帯分化。この2つが重なったところに、テレワーク定着による「もう一部屋ほしい」という住み替え需要が乗りました。都心通勤圏でありながら家賃を抑えられる北区は、その受け皿になったのです。
ただし、この追い風は永遠ではありません
オーナー様にお伝えしたいのは、ここからです。
自然減は年々拡大しています。今は転入超過がそれを補っていますが、この構造がいつまで続くかは分かりません。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、北区の2050年の人口は2020年を100として98.3。ほぼ横ばい、わずかに減る見通しです。
北区の2050年の推計人口(2020年=100)
98.3
出典:国立社会保障・人口問題研究所
世帯分化による需要増も、いつかは頭打ちになります。1世帯1人に近づけば、それ以上は分かれようがないからです。
つまり今の賃貸市況は、「地域の追い風」と「日々の管理」の両方で成り立っています。追い風が弱まったとき、手元に残るのは後者だけです。
追い風があるうちに、やっておくこと
① 単身・二人世帯向けの間取りに目線を持つ
ひとつは、単身・二人世帯向けの間取りに目線を持つことです。ファミリー向けだけを前提にした運営は、世帯人数の縮小と少しずつ噛み合わなくなっていきます。たとえば、在宅勤務に使える小さな部屋のある間取りや、二人暮らしでも窮屈にならない広めの1LDKは、世帯が小さくなる流れの中でも選ばれやすい形だと考えています。
② 設備更新や原状回復への投資を先送りしない
もうひとつは、設備更新や原状回復への投資を先送りしないことです。空室が少ない今は、家賃水準を保ったまま手を入れられる時期にあたります。空室が増えてから慌てて投資しても、値付けの主導権はすでに失われています。
数字は、追い風が吹いているうちに読むものだと思っています。北区の人口動態は、まだしばらく私たちの味方をしてくれます。その間に何を仕込むかで、10年後に差がつきます。
ご自身の物件がこの変化のどちら側にあるのか、気になる方はお気軽にご相談ください。創業54年、2,000戸を超える管理の現場から見えているものが、お役に立てるかもしれません。私たちもFPの立場から、修繕や設備投資を、借入の返済や将来の相続まで含めた資金計画の中でどう位置づけるか、というご相談もお受けしています。
よくあるご質問
Q. 北区の人口は、これからも増え続けるのでしょうか。
A. しばらくは微増が続く見通しですが、その中身は変わっていきます。現在は自然減(出生より死亡が多い状態)を転入超過が上回ることで人口が保たれています。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年の人口は2020年比で98.3とほぼ横ばいです。「増え続ける」というより「大きくは減らない」と捉えたほうが、賃貸経営の前提としては安全だと考えています。
Q. 1世帯あたりの人数が減ると、ファミリー向け物件は不利になりますか。
A. すぐに不利になるわけではありません。北区は子育て世帯の転入も一定数あり、ファミリー向けの需要自体は残ります。ただ、供給が厚いエリアでは競争が起きやすくなります。ご所有物件の周辺で単身・二人世帯向けと三人以上向けのどちらが不足しているのかは、駅ごと・町丁ごとに事情が違いますので、個別に確認されることをおすすめします。
Q. 人口動態のデータは、どこで確認できますか。
A. さいたま市のホームページで、毎月の人口・世帯数が区ごとに公表されています。過去のデータはCSV形式でも公開されていますので、数年分を並べて推移を見ることもできます。将来の推計は、国立社会保障・人口問題研究所が市区町村単位で公表しています。
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